12人が本棚に入れています
本棚に追加
774本当にあった怖い名無し sage 2005/07/26(火) 18:18:04 ID:amlXWpEo0
「健ちゃん、最近何して遊んでんだ?」
「山の近くで女の子と遊んでる」
「女の子? どこの子だ?」
「わかんない。着物着てるよ。かわいいよ」
「どこの子だろうなあ……名前はなんつうんだ?」
「……教えてくれない」
実際その子は一度も名前を教えてくれなかった。祖母も親も、その子がどこの子かわからないようだった。とりあえず村のどっかの家の子だろうと言っていた。
その夏は女の子と何度も遊んだけど、お盆を過ぎて帰らなきゃならなくなった。
「僕明日帰るんだ」
「そうなんだ……」
「あのさ、名前教えてよ。どこに住んでるの? また冬におばあちゃんちに来たら、遊びに行くから」
女の子は困ったような何とも言えない顔をしてうつむいていたが、何度も頼むと口を開いてくれた。
「……名前は○○。でも約束して。絶対誰にも私の名前は言わないでね。……遊びたくなったら、ここに来て名前を呼んでくれればいいから」
「……わかった」
年末に祖母の家に来た時も、僕はやはり山に行った。名前を呼ぶと、本当に女の子は来てくれた。冬でも着物姿で寒そうだったが、本人は気にしていないようだった。
「どこに住んでるの?」「今度僕のおばあちゃんちに遊びに来ない?」などと聞いてみたが、相変わらず首を横に振るだけだった。
そんな風に、祖母のうちに行った時、俺はその女の子と何度も遊んで、それが楽しみで春も夏も冬も、祖母の家に長く居るようになった。
女の子と遊び始めて三年目、俺が小二の夏のことだった。
「多分、もう遊べなくなる……」
いつものように遊びに行くと、女の子が突然言い出した。
「何で?」
「ここに居なくなるから」
「えー、やだよ……」
引越しか何かで居なくなるのかなと思った。自分が嫌がったところでどうにかなるものでもないとさすがにわかっていたが、それでもごねずには居られなかった。
最初のコメントを投稿しよう!