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「自殺したのか…圭介は…」
店主は眉間に皺を寄せ、目には悲しみの色を纏わせる。
「えぇ…報道では心臓麻痺となっているけれど…真実は違う。食事用に支給されていた箸を尖らせて頸動脈をひと突き…」
そうか…と店主は溜め息混じりに呟く
暫くの沈黙のあと、千景は立ち上がり声を荒げた。
「ねぇお願い!真実を教えてください!何故圭介兄さんは赤麗を殺したのか!何故圭介兄さんは共に逃げずに警察に捕まったのか!何故圭介兄さんは自殺したのか!あなたなら知ってるのでしょう?!」
悲痛な叫びのようなそれに店主は目を見開く
「お前さん…何か知ってるのか?」
「いいえ…でも二人を逃がそうと飛行機の手配したのは私…」
「そうか…あんたも『当事者』か…」
二人とも俯きまた重い沈黙が流れる。
店主はゆっくりと言葉を紡ぐ
「千景ちゃん…あんたは真実を知ってどうする…」
店主のその問いに千景は店主に視線を向ける。
その目に迷いや陰りはなく、真っ直ぐな感情をたたえていた
「本にします。どんな形であろうと…フィクションと書くことになろうと…私はあの二人の真実を知ってほしい。愛し合っていたあの二人の生きた『証』を残したい…私は西園寺家の人間ですが…小説家として家を捨て、あの家とは関係無い人間です。だからお願いします!」
「……解った…俺が知る限りを話そう…」
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