麻衣の時季・・・

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美嘉が遠い異国に旅立って一ヶ月も経たないうちに、 何となく気になるようになってきた人… そう、小悪魔の存在を亮はその時感じていた。 麻衣… 強がりは共通、しかし無駄な事は話さないのはこの子の印象だった。 生きる事の苦労を全て独りで抱えて悩む体質のようにも思えた。 ある日、亮はこんな事を麻衣に尋ねてみた。 「サンロク祭にはどんな浴衣着るの?」 すると麻衣は、「ううん、浴衣は着ない…持ってないし」 意外な答えだった。去年のサンロク祭はどうしたんだろう~ 聞いてみるとその日の一部はお店で独り留守番だったとか… もしかしておねだりあるかなって構えていた亮だったが、麻衣からは何の要求もなかった。 亮のいつもの悪い癖 「浴衣買いに行く?」 麻衣はなかなかの我儘娘で、「他の人とかぶりたくない・・・」 そんな希望で、老舗の呉服店に二人で足を運んだ。 亮が一番先に目を付け、最終的に選んだ浴衣は明るいオリーブ色で蝶の柄 草履・バック・帯締め等のアクセサリーなどなど一式を購入した。 そのあと重い紙袋を麻衣に持たせ、街中を歩いた。 もちろんごはんは付きもの・・・ ただでは帰してもらえないのが この夜の世界の常識だった。 お金もかなり底をついていたので 一時間位で 早々に引き揚げたのも事実だったが… ある日「今夜ごはん行く?」 そんな風に誘ってみたら 「めずらしく今夜は約束があるの・・・」 「じゃあまたの機会だね」 数日経ってから、今度は麻衣の方からメールが入った。 「亮さんとごはん行きたいの・・・」 「ちょっと仕事が混んでいるから 夕方四時位にならないと判らないなぁ~」 「じゃあ大丈夫そうだったら連絡頂戴・・・待ってる・・・」 そんなやり取りのあと・・・ 午後三時くらいだっただろうか、仕事に目処がついたのでごはんの約束にOKのご返事をした 「了解!楽しみにしてるね!」 するとまた麻衣からのメール。 「亮さん、今夜は忙しいんじゃない?明日はダメ?」 亮にとっては訳わからない内容のメールだったが… ずぶの素人でもなく 何となく空気を読んだ。 「他に約束でも入ったの?」 「うん^^;」 「行っておいで!」 これがお水のドタキャンかぁ~亮はそう思った。 「まぁいっかぁ…」
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