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昼休み終了のチャイムが時刻を告げる。慌ただしい中始まった5限目、あたしの苦手な古典。誰にも気付かれない様小さく、だけど深い溜め息を吐いた。授業は淡々と進む。
まるであたしは誰の目にも映らず、傍観するだけの幽霊のようだった。あたしは世界から孤立した気分になった。急に恐ろしくなり、教室から視線を逸らす。
窓一枚の向こう側
眼下に見える馴染みの街
疎ましいほどに澄んだ空
よく耳にする戦争、自殺、餓死、環境問題。
世の中は酷く荒んでいるはずなのに、それを思わせないような平和な現在。平凡な毎日
飽き飽きするほどに繰り返す、なんの変哲もない毎日。
「!」
窓一枚向こう側の、斜め前に視線を向ける。
学校の筋向かい、病院の屋上に
その少年はいた
(何してんだろ…患者さんかな)
今日は風が強かった。
細身のその少年を、吹き飛ばしてはしまわないか、変なところであたしはそわそわしていた。
真っ黒な髪が風に踊らされる。何をするわけでもなく彼はただじっと、あたしがさっき見ていた街を見下ろしていた。
授業はのこり10分
彼は何もしなかった。だけど全く動かない。
6限目 英語
あたしは授業を放棄した
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