白い空間 あたしときみ

1/3
前へ
/33ページ
次へ

白い空間 あたしときみ

昼下がりの太陽が頭上で輝いていた。強い日差しから逃れたかったが、昼間は影が少ない。 病院の前で足を止める。まだあの少年は、あそこにいるだろうか。 「お見舞いの方ですか?」 ふいに声をかけられ、驚いて振り向くと、そこには若い看護士がいた。 「あ…えっと…」 「まだ面会時間は大丈夫ですよ、どうぞ」 微笑む彼女に負け、あたしはおずおずと院内に入った。静かだった。そして涼しかった。 誰の面会をするわけでもないあたしの足は、仕方なしに階段へ向かっていた。彼がいるであろう、屋上へ あの少年は何をしているのだろう 何を見ているのだろう 好奇心があたしの足を早める。屋上の扉は解放されていた。あたしはゆっくりと、その長方形の扉を潜った。 目の前には真っ白いシーツがはためいていた。 太陽の光を浴び輝いている、その屋上が、あたしには白い空間の様に、一瞬だが思えた。汚れのない、空間 少しの間、足は動かなかった。吹き付ける風が優しくて、照る太陽が暖かくて。 綺麗だった 「…誰?」 重低音の、響く声が、耳を透った。体が一瞬びくりとした。もしや、この声の主は…
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加