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白い空間 あたしときみ
昼下がりの太陽が頭上で輝いていた。強い日差しから逃れたかったが、昼間は影が少ない。
病院の前で足を止める。まだあの少年は、あそこにいるだろうか。
「お見舞いの方ですか?」
ふいに声をかけられ、驚いて振り向くと、そこには若い看護士がいた。
「あ…えっと…」
「まだ面会時間は大丈夫ですよ、どうぞ」
微笑む彼女に負け、あたしはおずおずと院内に入った。静かだった。そして涼しかった。
誰の面会をするわけでもないあたしの足は、仕方なしに階段へ向かっていた。彼がいるであろう、屋上へ
あの少年は何をしているのだろう
何を見ているのだろう
好奇心があたしの足を早める。屋上の扉は解放されていた。あたしはゆっくりと、その長方形の扉を潜った。
目の前には真っ白いシーツがはためいていた。
太陽の光を浴び輝いている、その屋上が、あたしには白い空間の様に、一瞬だが思えた。汚れのない、空間
少しの間、足は動かなかった。吹き付ける風が優しくて、照る太陽が暖かくて。
綺麗だった
「…誰?」
重低音の、響く声が、耳を透った。体が一瞬びくりとした。もしや、この声の主は…
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