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「…少年…」
「は…?」
「あっ、いえ…何でも」
彼、だった。
教室から見ていたよりもずっと背が高くて、色白で、整った顔立ち。細身なのは当たっていたけど、幼さはなかった。黒髪がなびく。
「あんた、そこの生徒だろ?」
人差し指を、あたしがさっきまでけだるく古典を受けていた学校に向けた。あたしが答える間もなく彼は話を続けた。
「さっきこっち見てただろ」
「えっ…」
「俺は一週間くらい前から見付けてたけどね、一人だけ仏頂面で外見てたから」
そう言って彼は柵にもたれ笑っていた。背景に青空。
「あっあたしそんなに目立ってた!?」
「うん、一人ぼけっとしてんの。何で先生気付かないんだろって思うくらい」
驚きと、恥ずかしさで、体温が急上昇した気がする。
「で、何しに来たの?」
急に問い掛けられて戸惑ったけど、彼はあたしの答えを待っていた。
「気に、なったから…何してるんだろーって…」
それを聞くと突然彼は吹き出した。驚いて彼の顔を見なおすと、大笑いしていた。
「自殺するかも、って?」
「そっ…そんなんじゃ…!」
「別に、何も」
「え?」
「別に何もしてないよ、暇だから来てるだけ」
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