prologue.

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  人が全く来ることがなさそうな店に入って来たのは、老人だった。 キースの声にああ、と返し杖をつきながら先程の振り子時計に向かって行く。 この老人は、ウェルターという名で、週に何回かあの振り子時計を見に来るのだ。 「ウェルターじいちゃんよぉ、そんなにその時計が気に入ってんなら家まで持ってってやんぜ?」 「………。」 「…って聞いてねぇか…」 ウェルターはいつの間にか椅子を持って行き、振り子時計の前に座っていた。 少ししか吸っていなかった煙草に再び火を点けた。 この店は客が居るとしたら、ウェルターじいちゃんただ一人。 「まだ…昼前か…」 ふぅーっと煙を吐き出す。そしてキースも振り子時計の音に聞き浸る。 何本吸うことになるだろうか…
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