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「じゃあ……杏ちゃん1つ約束してくれる?」
廉さんが自分の左手の小指を私に可愛くかざしてみせた。
「え……?約束?」
「うん。この話しをする代わりに竜と毎晩一緒のベッドで寝てくれないかな?あ!ヤラシイことは極力……ううん、ほどほどにさせるから。ね?」
「え!?」
思わず耳を疑う。
しかし廉さんも……またコタローも¨お願い!¨と言わんばかりに目を細めてくる。
「ば……バカッ!そういうことは俺が直接言う!他人から言われんのほど恥ずかしいことないわ!」
竜が突然口を挟んでくるが、廉さんはシレッとした態度で
「へぇ~!なら尚のこと僕の口から暴露させてもらうよ。孝太郎くん、竜の口もしっかり黙らせといてね」
そう言うと、廉さんは徐<オモムロ>にソファから立ち上がり、私のいる方へと歩み寄ってきた。
「杏ちゃん、よく聞いてね?実はアイツ……NYにいる間ずっと睡眠導入剤を毎日服用してたんだよ?」
「え……睡眠薬?どうして……」
「そう。どうやら竜ね、抱き枕が無いと眠れない体質みたいなんだよ」
「………抱き枕」
「抱き枕って言っても人形やぬいぐるみではなく……杏ちゃん、君自身なんだけどね?」
廉さんはイタズラっぽい顔して、私のオデコをチョンと突いた。
「……………」
黙り込む私に、コタローが更に続ける。
「杏ちゃんには悪いけど、竜様のこれからの体調万全管理という点に関しても……是非一緒の布団で寝て欲しいのよぉ」
「………グッ……ウッ……!」
可哀相に……竜は、口いっぱいにコタローのハンカチを詰め込まれ、言葉を発することすら許されずにいた。
………何だろう。
いつの間にか私、闇の組織に囚われて
まるで脅されるかのようにして、身の危険を脅<オビヤ>かす依頼を強要されている気分になってきた。
「どう?杏ちゃん。これはもはや国家指令でもある重要な問題なんだよ」
廉さんは……爽やかに、且つニコやかに恐ろしい言葉を放つ。
どう?って………
私に選択の余地なんかありゃしないじゃんか!?
私は、しばらく考えたのち
1つの決断を下す。
ってか、もともと1つしか無いけどさ!
「………仕方ないわね。わかったわよ」
と、半ばふて腐れ気味に答えた。
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