0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
静かに揺れる電車の中で
私は目を覚ました
左手につけた腕時計は
12時過ぎをさしていた
右隣に置いた小さな鞄から
コンビニのサンドイッチを出した
包みを開けて食べようとすると
目の前に男の子が座っていた
あまりにまじまじと見てくるので
私はサンドイッチを差し出して
「君も食べる?」と聞いてみた
しかし男の子は必死に首を振り
「いらない、いらない」と言った
私は、「もうひとつあるから」と
鞄から取り出して見せた
そして男の子にサンドイッチを渡した
男の子は「ありがとう」と言い
隣の車両に走って行った
私はサンドイッチに目を戻したが
重要なことに気が付いてしまった
この電車は一両編成だったはずだ
男の子が走って行った方には
トイレと車掌席が見えるだけ
その先にはこの電車が今まで通った
錆びかけた線路が見えた
「あ、あれ?さっきの子は...」
まさかの幽霊かよと思った
そうこうする内に降りる駅に着き
私は鞄を抱え電車の外に出た
ふと、車掌席を見ると
そこに車掌の姿はなかった
一両だからかなと思ったが
それは違っていたようだった
運転席にも目をやると
運転手もいなかったのだった
「え、えぇええ!!まさかでしょ?」
今までこの電車はどうやって
ここまで走ってこれたのか
運転手も車掌もいないとは...
すると次の瞬間、電車が透け
私の前からは電車が無くなった
もはや言葉さえ出なかった
立ち尽くす私の横を
爽やかな秋風が通り抜けた
かすかに男の子の笑い声が聞こえた
最初のコメントを投稿しよう!