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『こ、こんにちわっ!』
『……こんにちわ』
戸を引いて現れたのは、同じ年くらいの猫の毛みたいにほわほわの髪の毛が印象的な黒髪の少年。今までだったら、使用人の大人が無言で玄関に食事を置いて去っていくだけだったのだが、その少年は緊張しているようで、手をカタカタ震えさせながら食事を持って立っていた。
おまけに挨拶してきた。
だから挨拶を返してみたら、きょとんとしたあと、へらっと情けない笑顔を浮かべた。
『うはぁー、緊張したー!なんだよ、さいじゅうようじんぶつとか言うからちょー緊張してたのにコドモじゃんかー』
緊張して損したー、と何となく失礼な言葉を発しながら少年はそのまま部屋に足を踏み入れた。サナも怒られているのに、こいつは大丈夫なんだろうか。きっと大丈夫じゃないんだろう。だって、たぶんこいつただの使用人だし。
『これ、飯持ってきた。俺昨日からここで働くことになった名無し。孤児だ、よろしくな』
『………』
ななし?こじ?
なんのことだろう。
『お前は?』
いつのまに目の前まで迫っていたのか、ずいっと顔をのぞきこまれた。…どうしよう。
しゃべって、いいのかな。
この子、あとで叱られたりしたいかな。
『……ひろと』
『ひろとか。よし、ひろと!早く飯食え!俺げぜんも仕事だからさ、お前が食わねぇと俺も昼飯食えねーのよ』
『へぇ…』
やっぱ使用人なんだ。
これからも…?
『え、と……ななし?』
『ん?なんだ?』
『昨日までの人は一回戻ってから取りにきたけど、ななしは戻らなくていいの?』
『面倒!』
あまりの即答に、俺は笑ってしまった。
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