第一章

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とりあえず先に、前文を訂正させてもらおうと思う。 よくよく考えてみれば、編入生として招かれるのは神楽もといシュン先輩のみだ。 何故、変なところで徹底主義の神楽は名前と出生だけに止まらず、年齢まで誤魔化しやがった。つまり神楽は二年生としてこの学園に入り、俺は新入生もとい外部生として入学することになっている。 まさかコンプレックスである身長の低さがこんなところで役に立つとは。顔立ちまで童顔かどうかは自分で判断しにくいが、一年生として入るぶんには何ら支障はないだろう。 俺は、の話だが。 「………」 「…どーしたのかな、ハクトくん。人の顔じっと見て」 「…シュン先輩、老けて見えます」 「俺もそう思う」 普段の姿ならまだしも、ヲタルックの神楽は二割三割老けて見える。 タッパもあるし、貧弱でもないから、ボサボサの髪や身なりがそうさせるのかもしれない。いや、させている。うん。 「まぁ最近の高校生は発育いいから問題ナッシン」 「最近のって、お前いくつだよ…」 「いいからいいから」 笑顔で誤魔化そうとする神楽は、そのまま話を流す気満々だ。 門を越えたその場所でいつまでも立ち話しているのもなんだと思い、神楽を置いて早々歩き出す。後ろに追い掛けてくる気配を感じながら、俺が足を向けた先はこじんまりとした一軒の小屋。 そこは守衛の部屋となっている、別名末期ヲタの部屋。 「マモルと会うのも久しぶりだなー」 「…まさか衛さんと神楽が知り合いだったとは思わなかったよ…」 「あ、ハクト呼び方間違ったー。ミス一回にハグとちゅーな。もちろんハクトから」 「衛さんと知り合いだったのは神楽なんだから別に間違っちゃいねぇだろ。つかなんだよその罰」 聞いてねぇぞ、と言えば、言ってないもん、と再びいっそ清々しいほどの満面笑みが浮かべられる。加えて付き足したように、今度間違ったらその罰だからね、と言われた言葉は是非聞かなかったことにしたい。 迂濶に間違えられなくなった呼び名。 そんな罰を受けたら俺はきっと羞恥で死ねる。 「シュン先輩が間違ったらどうするんですか」 「え、俺からのハグとちゅーに決まってるじゃん」 「どっちにしろ罰ゲームじゃねぇか!!」 「ひどっ!?そんなに俺のハグちゅーが嫌なの!?」 「つかお前が罰ゲームになってねぇよ!!よし決めた!!シュン先輩が間違ったら一週間、俺との電話メールその他の交流一切禁止な!!学園でもだめ!!」 「そんなの耐えられないよ!!」 「間違える気満々じゃねぇか!!」
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