第一章

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その時、ガチャリと扉が開いた。 「ねぇ…門開けてからどんだけ時間経ってると思ってんの。1スレ見終わっちゃったよ」 呆れた視線を俺たち二人に送りつけたのは久々に見た衛さんだった。 「よっ、マモル!!久しぶり!!この度はどうもな」 「久しぶりだな、ハルト。捕まっちまえ」 「やだなー。情報操作したのはマモルなんだから捕まるのはマモルに決まってんじゃん」 「しねよ」 神楽相手にさりげなく罵声を浴びせるマモルさんはなかなかのお怒りモード。 一年前まではただのヲタな守衛さんだと思っていたのに、この人はどういうワケか神楽と知り合いだった。 しかも結構長い付き合いらしい。 だから神楽は俺の面倒を見てほしいと頼んでいた。あんま面倒見てもらった記憶ないけど。 まぁこの人のおかげで俺は街に出れたし、神楽のことで欝になってる時なんとか立ち直れたんだけど。 …あれ?世話なってんじゃん、俺。 「衛さん」 「久しぶりだな、ヒロト。お前を慰めたあの夜以来だ」 「久しぶり。その節はお世話になりました」 頭を軽く下げてお礼を言えば、やめろよなんて苦笑いしながら頭を撫でられる。 この人に神楽を重ねて見たことがあった。たぶんどこか、曖昧な部分が似ているんだと思う。 だから、この手に安らぎに似た感覚を覚える。 だから、この人には遠慮なく甘えられる。 「慰めた…って、おいこら。マモルてめぇまさかとは思うがヒロト傷ものにしてねぇだろうな…いてっ!!」 バシン、と俺の平手が神楽の頭を直撃。 「ばっ…………か、じゃねぇの!!馬鹿!!このばーか!!」 「え…ヒロトひどっ」 「はい間違えたー。お前俺に一週間話しかけんなよ!!電話メールも一切禁止!!つかもうこっち見んな!!」 ふんっ、と顔を背けてやれば情けない神楽の声が聞こえた。そして自然と目を向けた方向にいた衛さんは、笑っている。 「なかなかおもしろいことしてんな」 「面白いわけねぇだろマモル!!あーもー、ヒロトー、許してー。一週間も寛人と話せないとか俺死んじゃうってー」 「しらね」 「寛人ー…。さっきの罰ゲームはなしにするからー」 「じゃあしょうがねぇな。許してやる」 「なぁ、お前ら。イチャついてねぇでさっさと入れよ。寒い」 春と言えども、まだ寒いこの季節。 イメージ的にはポカポカ陽気が嬉しい時期のはずだが、現実はそうもいかない。まだ長袖は手放せない。 そういうわけで、俺たちはおとなしく衛さんの言うことに従うことにした。
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