序章

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『母親は別の男と出て行った』 それを父親から聞かされた時、私は余り理解出来なかった。 ただ、母親が出て行った先の玄関を彼女がいつ帰ってくるのか、とずっと見ていた気がする。 いつしかもう帰って来ないと気付いたのは小学生に上がって暫くした時だった。 寧ろ、気付かされたとでも言うべきだろうか。 何故なら下校途中。いつも通り過ぎる公園を何気なく見たら、出て行った母親の姿を見つけたのだから。 直ぐさま駆け寄り「お母さん」と呼んだ。 けれど、母親は。 いや、母親だった人は。 まるで腫れ物でも見る様に私を見つめ、「お前なんか知らない」と連れていた子供(私と同じぐらい)と一緒に逃げて行ったのだ。
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