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私は毎朝、起きたら顔を洗い、歯磨きをして、朝食を作る。二人分の目玉焼きを焦がさないように慎重焼いて、まだ目覚めない連れを起こす。
「そろそろ起きないと。もう8時だよ」
「うるさいわねぇ。さっさと仕事行きなさいよ。朝ごはんはできてるの」
連れはのそのそと大欠伸をつきながら、ようやく目覚めた。これでも普段より寝起きはいいほうだ。連れは起き上がるとすぐに玄関を指差した。私はすぐに玄関に向かい、新聞を取ると、連れに渡した。
「なぁに、今日は醤油な気分なのよ。コショウなんてかけないで」
私がコショウのビンに手をかけた時に連れはそう言った。昨日は醤油をかけたらガミガミ五月蝿く言ったくせに。これだから女は嫌になる。
私はパジャマを脱いだ妻に、普段着を着せた。その際、少しでも肌に触れるとガミガミ五月蝿いのは言うまでもない。
朝食を片付けると、さっそく洗い物に取り掛かる。「女子、台所に入らず」と言って、妻はてつだおうとはしない。
私は洗い物のあと、洗濯物を干し、掃除をしてから家から駅まで走る。そして、満員電車に揺られながら会社に行くのだ。
もっとも、これが日本男子の正しい在り方らしいのだが。
つくづく女尊男卑の世の中だと思う。最近はチカン冤罪によって、罪もない男たちが無実の罪を着せられている。ついには、男性特別車両まで登場した。私も冤罪に巻き込まれるなど御免なので、毎日利用している。周りの男性たちは皆疲れきった、さらに安心したような顔で佇んでいる。
思えばこのひと時が、唯一安心できる時なのかもしれない。
会社に着けば、女子社員への発言と対応に気をつけながら、上司のイヤミに堪えるのだ。
私はこの世の中に疑問を覚えながらも、なにもしないし、できようもない。
遠い昔は、男尊女卑の世の中で、男性が傍若無人に振る舞えたらしいが、私には到底信じられない。少なくとも、ここ数百年、男性が権利を訴えた活動なども目立たない。
一応あるにはあるが、女性側のこの主張で一蹴されてしまっている。
「女性は男性よりもか弱く、守らねばならない存在でしょう。そして、その発言はパワハラではないのですか」
何故か、こう言われると世の男性は口をつぐんでしまう。
遠い昔の男性たちは、どれほど自由だったのだろうか。
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