天国

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天国

人々は天国というものが本当にあるのか知りたがっていた。しかし、もちろんのことながら、これを実証した者はいない。 人々は死のその直前まで、自分が天国に行けるか、いけないかを案じていた。 そこで、一人の男が立ち上がった。天国を誰よりも望む者、マエハラであった。マエハラは、誰とも相いれようとはせず、ただ天国に行って、一人静かに過ごしたいと望んでいた。 それからマエハラは、寝る間も惜しんで天国を実証するための方法を模索した。怪しげな機械を作ってみたり、カエルを殺してみたり、ロケットを飛ばしてみたり。しかし、いずれも天国へ行く手段にはなりえなかった。 そんな時だった、ある田舎で深く、暗い穴が見つかった。それは、半径が10メートルほどあるであろうか、という幅で、底はいくら覗いても、果てがしれなかった。 マエハラ氏はさっそくそこに出向いた。彼はその穴の先にこそ天国があるのではないかと思ったのだ。そして、試金石としてカエルをほうりこんでみた。しかし、何も起こらない。 そして、次々にカエルをほうりこんでみた。すると、不思議なことにカエルたちは、自ら穴に飛び込むようになった。 「これは、カエルに聞いてみるしかないぞ」 マエハラ氏はそう思い、カエルと喋れる機械を発明した。そして、一匹のカエルに話しかけた。 「お前たちは進んであの穴に入るが、どこに通じているのだ」 「それは、天国みたいなところに繋がっているのさ。何にも縛られない、夢のような世界に」 マエハラ氏はこの話を聞き、涙を流して喜んだ。ついに見つけたのだ。私の、いや、人類の夢を。 マエハラ氏は早速穴に向かった。しかし、いざ穴を前にすると、踏ん切りがつかない。そこで、穴の中にいるであろうカエルたちに話しかけた。 「おーい、そっちはどんな様子だい」 「素晴らしいよー。こんな世界があったなんて。早くおいでよ」 マエハラ氏はそれを聞き、足を踏み出そうとした。しかし、やはり足が進まない。 「うーむ、まず誰かに頼んでみよう」
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