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そこでマエハラ氏は、天国に行きたいという人を募集した。もちろん、死にに行くのではない。夢のような世界、という意味の天国だ。
すると、すぐさまたくさんの人々が集まった。みんな、幸せとはいえない生活を送っている人々だった。
彼等も最初は疑っていたが、例の機械を使ってカエルの話しを聞かせ、穴の中のカエルの嬉しそうな声を聞かせると、すぐさま穴に飛び込み始めた。
さらに、飛び込んだ人々の声も聞こえるようになった。皆、歓喜して喜んでいる。
今度は、その噂を聞き付けた金持ちたちがやってきた。同じように説明すると、皆穴へ向かって飛び込んでいった。さらに、今度は著名人が、大統領が。皆の楽しそうな声が穴から響いていた。
そして、ついにマエハラ氏だけが残された。
「ついに私も天国に行けるぞ」
マエハラ氏は内から溢れるような喜びを胸に、穴に飛び込んだ。
どんどん、どんどん深くに落ちていく。すると、楽しそうな声が聞こえた。ふと、壁を見ると、沢山のカエルたちが壁に張り付いて歌を歌っていた。 人の声のような、いやそれ以上の声で。
地上に開いた穴から、次々とカエル達がはい上がってきた。カエルたちは、外の景色を見て驚いた。空気の綺麗さに驚いた。朝焼けの美しさに驚いた。
これほど、澄んだ世界を見たことがあったろうか。この世界では、大気を汚染する工場も、海を汚すタンカーも、自分たちを虐げる猿もいないのだ。
カエルたちは再び歌いだした。カエルの泣き声が、静寂の空に響き渡る。さも、勝ち誇るかのように。
そこは、まさにカエルたちにとっての、天国に違いなかった。
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