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「貴方の夢を叶えます」
「………はぁ?」
「いえだから貴方の夢、願い、欲望を私、夢先案内人が叶えます」
意味不明、理解不能。
いきなり不法侵入したと思ったら今度は夢を叶えますだ?ふざけんな!
「ちょっと!なにするんですか!」
俺は男の襟を掴み、玄関まで引きずる。
「出てって貰うに決まってんだろ!お前みたいな怪しい奴の相手なんかしてられるか!」
人間として当然の反応。
「てかどうやって叶えるってんだよ!あれか?便利屋みたいな感じの奴か?だったら帰れ!新手のセールスまがいはお断わりだ!」
「いえいえちょっと待ってください」
男は俺の手を振り払って立ち上がる。
「そのような便利屋などという者と一緒にされては困ります、私、夢先案内人はお代は取りませんし、それに貴方の願いをそっくりそのまま文字通り一瞬で叶えて差し上げます。野球選手になりたいという願いから、大金持ちになりたいというありとあらゆる夢を叶えて差し上げます」
「どうやって」
「神秘の力で」
「よし!帰れ」
再び襟首を掴み引きずろうとするが。
「わかりました」
「何がだよ…」
「貴方は私の神秘の力を信じられないとそうおっしゃるのですね」
「お前そのものが信じらんない」
「では取って置きをお見せしましょう」
男は俺の言葉を無視して玄関口の隣にあるキッチンに向かい勝手に引き出しを物色し始めたかと思うと、あるものを取り出した…
それは…包丁だった…
「おまえっ!」
刺されると思い身構えるが、男は包丁を器用に指の先で回しながらこっちを見るだけだった。
「よく見ていてください」
男は数秒包丁をくるくると回し、それをピタッと握ってやめたかと思うと…
包丁を…
男自身の足に…
刺した…
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