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「どうやら信じていただけたようですね」
男は包丁を抜き取り、それをキッチンに置く。包丁には生々しくも肌色の肉片がいくつかついていた。
それでも赤色は見当たらない。
男は徐々に俺のほうに近づいてくる…後ろに下がろうとするが、後ろは扉、慌て扉を開けようと立ち上がり、ドアノブに手をかけるが、開かない。
そこで気付く。
鍵が掛かっている…ということは男は…
その瞬間俺は確信した。
この男は怪異だと…
「お分かりいただいたようですね、でも安心してください。私は貴方を驚かせに来たわけではありませんので悪しからず、ただ願いを叶に来ただけです」
「願いを叶えてお前に何の得がある…」
何をされるかわからない恐怖に耐えながら、男の目を見る。
「私が人間ではないと確信した貴方ならお分かりいただけるとおもいますが。私、夢先案内人は人間の欲を食らうのです。夢食いばくなんて洒落たものではありませんがね」
どこまでが本当かわからない、でもこの場合、逆らわないほうがいいと判断した俺は部屋に戻り、さっきの位置に腰をおろす。
「ではもう一度聞きます、貴方の夢はなんですか?」
「………」
「どうしたんですか?」
まずい…これぞまさしく非常事態…
俺は…
「あのーもしもーし」
言わなきゃなにされるかわからない。でも俺は…俺は…
「俺は…夢が無い…」
沈黙
沈黙
沈黙
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