赤い手帳

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 昨日も去年の手帳を見返していたんです。ほら、今日の私、いつもより目が腫れているでしょう。お陰ですごく寝不足なんです。それにね、少しセンチメンタルな気持ちになってしまって、泣いちゃったんですよ。  なんで泣いたか気になりますか。それはですね、お恥ずかしい話なのですが、去年、私お付き合いしていた男性がいたんですね。ほら、もう想像つくでしょう。その方とのことを思い出すと、懐かしくて、あの頃に戻りたいなって思ってしまって、ね。あれからもう一年も経っているのに、涙が溢れたのに気付いた時は、自分でもびっくりしちゃいました。  彼は、私より十四も年が上でした。背が高くて、頭の良い人で、涙ぼくろと笑った顔が素敵な方でね、私、涙ぼくろに弱いんです。  本当に自分なんかには勿体無い人でしたよ。もう一回出逢いからやり直してみたいなぁなんて、思いますもん。人生はテレビゲームじゃないんだから、そんなこと不可能だって分かっていますけど、想像してみたりはしますね。そのくらい、良いじゃないですか。  あ、そうそう、昨日手帳を読み返していて発見したことがあったんです。私、メモ魔なんですけどね、そうです、メモ魔ってのは、なんでもメモをとる人のことです。手帳の後ろの方ってメモ欄があるでしょう、自由スペースの。あそこにね、色んなことを書き込む癖があるんです。その日知った新しい情報だったり、素敵な言葉だったり、もうなんでもかんでもね。
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