スピカ

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なるほど、そうか、美しいから。僕はそれで納得した。 美しいから。それ以外の理由など必要だろうか。僕たちの目の前いっぱいに広がる夜空は、この世のどんな宝石よりも美しい。スピカと二人でいる時、確かにそう思えた。 「だけど時々不安になるの。夜の闇が怖くなる時があるの」 それもよく分かる。いずれは陽がのぼる。そんなことは分かっているのだが、夜の闇の深さは時々、永遠に続くのではないかと思えるほど暗く、重たい。 でもこうして手を繋げば、と言って僕は彼女の手を握る。でもこうして手を繋げば、怖くない。一人じゃないから。一人じゃないっていうことは、怖くないっていうこと。 「そうなの?」スピカは冷えた手で僕の手を握り返した。 そう、それを教えてくれたのはスピカだから。 「変なの。よく分からない」、おかしそうに笑って、スピカはまた夜空を眺めた。
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