スピカ

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なにか温かいものを飲もう、コーヒーは? と僕が尋ねると、スピカはいらない、と言って首を振る。眠れなくなるから。 だけど僕は知っている。スピカはコーヒーを飲もうがそんなの関係無しに、眠れない。 もう少しだけこうして星を眺めていたい、そう言ってしまえば、もう僕の言うことは聞かない。 スピカ、君が見ているのは本当に星なのか? 「何を言うの?」 君が見ているのは本当に星なのか? 「それ以外に何だっていうの?」 スピカが怒っているのが分かる。僕は彼女を怒らせた自分が嫌になった。だけどどうしても聞きたかったのだ。 ごめん、気を悪くしないでほしい、そう言ったあと、僕は何も喋れなくなる。 「ううん、謝らないといけないのは私のほう。ごめんなさい」、スピカは僕の胸に顔をうずめた。 僕はスピカの匂いが好きだ。彼女の匂いは僕を安心させる。 「心配しないで。私はここにいるから」
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