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熱を出した日の夜の夢だ。
大しけで荒れた海を船で渡ろうとする女の人がいた。雨も小雨でこれから本格的に振り出すだろう雲行きだった。
すぐ傍にこれから海に出るだろう海上警備隊のらしき船があった。その警備隊は女の人に変えるように何度も勧めていた。でも、身内の不幸があったからどうしてもすぐ前の島に渡りたいといっていた。
何も海が荒れてるこんなときに無理してわたらなくてもいいだろう。無茶をしてわたれば自分が身内の仲間入りするだろうに。そんなことを思いながら海岸から少し下がった道路を自転車で自分は走り抜けて行った。
S字に大きく曲がった下り坂。時間帯は夕方から夜だろうと思う。というのは暗かったからだ。
車どおりの少ない坂をスピードに任せて降りていく。
「今日の仕事は終わったのか?」
ちょうど同じ頃仕事が終わったのだろう父親が坂を下っていて、自分に声をかけてきた。
「うん。終わったから久しぶりに帰るんだよ。」
そういってそのまま先に下りていった。
何度も曲がるカーブ。ふと、視線を横にずらして見えた風景に不思議と怖がることはなかった。それは戦争中の焼け野原。まだ家々に燃え広がる火の海。自分の仕事のせいもあって、映像も写真も身近だったからこうして現れたのかもしれない。
でも、このとき何故か頭の中に「今日は13日の金曜日」なんだっけと考えていた。
そのまま家の傍まで着た頃足を引っ張られる感覚にあった。なんだろうと思って足を見ると透明な人型をしたものがくっついていて、一生懸命足をがりがり引っかいてくる。
家に着くなりそれに足ではなく靴を渡したら嬉しそうにどこか絵消えた。ホッとして家に入ろうとすると、今度はもう一回り大きなのが玄関を閉じられないように引っ張ってくる。
怖かった。何が欲しいのか分からない。手を伸ばそうとしてくるから、玄関に飾ってある人形を渡した。けど人形は頭だけをいらないとばかりに引っこ抜かれ置いていかれた。
人形の胴体だけで満足したならそれで良いと思った。だからすかさず玄関を閉めた。
でも、それで終わらなかった。
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