酒のさかな

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昔はよく、さだきちなんていった 間が抜けた使用人みたいなのがいたんだそうですな。 「お~い、さだきち~」なんて旦那様がお呼びになると、 「へ~い」なんて、威勢だけはよろしいようで。 「さだきちは、いくつになるな」 「え~っと~、昨日は4つでした。」 「昨日も今日もないだろう。いくつだ」 「ですから、昨日はお餅4ついただきました。」 「ばかやろう、餅の数じゃない。歳を聞いているんだ。」 「あ~、それならここへきて四年ですから、四歳でございます。」 「嘘をつけ、お前は0歳の時にうちにきたのか」 「旦那様はまがぬけておりますね、0歳では使用人にはなれませんよ。」 「・・・・」 旦那様、思わず言葉を失います。 「まぁ、お前もいい歳だ。いつまでも間が抜けててはいけない。おじさんが物事を教えてやろう。」 「本当ですか。では、ひとつお聞きします。」 「なんだ」 「旦那様はなぜここに私を呼んだんですか」 「・・・」 また言葉を失ってしまった。 もういいやってんで旦那様から語り出します。 あそこにはなにがあるだのこれはこうだからこうなるだの。 さだきちもとりあえずへいへいいってきいているのかどいかもわからない。 「お前、サケはしってるか」 「はい、旦那様には内緒ですけど、たまに隠れて飲んでおります。」 「ばかやろう、俺にいっちゃだめだろう。そのサケじゃない、魚のサケだ。」 「サケって魚なんですか。じゃあその魚をしぼるとしるがでできて・・」 「そのサケじゃない、べつものだ。」 「へぇ~」 とまぁ、こんな感じでいろいろおそわりまして、 ある日の旦那様、用事ができたとみえて 「お~い、さだきち~」 ・・・ 返事がない。 「さだきちや~い」 ・・・・・ 「お~い」ってんで旦那様の方から さだきちの部屋へ 「おいおい、寝ちゃってるよ」 体をゆすっておこすと、 「あ、晩飯ですか。」 「ちがうちがう、ちょっと用事を思い出したんで出かけてくる。留守をたのみたいんだが」 「へい、おやすいごようで」 「では頼んだ」 って旦那様は出かけた。 すれ違いざまかどうか、ちょっとすると、 「ごめんくださ~い」 って客がきます。 「なんでしょうか。」 「はちこうはいるかい」 「いえ、うちにははちこうなんていません」 「おかしいな。このいえのはずだが」 次へ
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