ラクトガール

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「…咲夜、この子はしゃべれないの?さっきから口を開こうとしないんだけれど…」  しゃべれるのならとにかく謝って欲しいとわたしは思った。 不可抗力と言えどもわたしは現実に大変な目にあったのだ。 まぁ、避けられなかったわたしもどうかとは思うが…… 「いいえ、しゃべれますよ。私と居るときは口止まず話していますから……ただ、ここで私とお嬢様以外の人に 会ったのは初めてですから、きっと緊張しているんでしょう……仕方ないわね…ほら、十夜、ご挨拶は?」  そう言って、咲夜は十夜を自分の前に押し出した。 「……………」  少年は、なかなか口を開こうとしない 「……………えっと、……初めまして、パチュリー様………で、いいんですよね?」  しばらく間をおいてからようやく声を出した。 外見通り、少し高めの声だった 「……えぇ、そうよ。……ところで、十夜……?わたしは先刻、あなたのせいで大変な目にあったのだけれど………何か、言うことは無い?」  わたしは、十夜の問いに答えながらも、不機嫌そうに声を返していた そんなわたしの態度に、十夜も気付いたらしく少し焦りながら謝ってきた 「ごっ、ごめんなさい!…僕、こんなにたくさんの本を見たことが無くて……ここに入って来てから周りの本を見上げてたから、前にあった本の山に気付かなかったんです………本当にごめんなさい!」  十夜はそう謝罪しながら、勢いよく頭を下げた 「………まぁ、謝ってくれるならそれでいいわ……」  素直に謝れば、それでいい。咲夜が育てるのであれば、人格的には問題なく育つだろう………そう思って許すことにした 「……それでは、パチュリー様、私はこれで。館の掃除もまだ残ってますので……後でお茶を届けに参りますわね」  そう言って、咲夜は十夜を連れて図書館を出ていこうとした。 わたしも、それきり興味を無くし、読書に戻ろうと本に視線を戻し、椅子に座った
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