ラクトガール

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「あの、恐れ入りますが、パチュリー様。今日、十夜はまだ、ここに来ていませんか?」   咲夜が尋ねてくる…… 「いいえ、今日はまだ来てないわよ」  十夜がいつもここに来る時間は過ぎているが、少しくらい遅れる事は時々ある。元々約束して来ている訳ではないのだから…… 「そうですか…では、おかわりは止めておいた方が良いですね……そう。じゃあ、これから来るのね。あの子…」  最後の言葉は、ほとんど聞こえない程の小声になっていた。 咲夜は、少し悪戯っぽく微笑んでいる… 「…ちょっと、どういうことなの、咲夜」  わたしのその言葉に、咲夜は自分の薄い唇に指を当て、『内緒です』、と答えると、そそくさと図書館を出ていってしまった… 「なんなの、一体…?」  いつもと違うメイドの態度に、少しばかり戸惑った……  それから、数十分後……  それまでと変わらずに本を読んでいたわたしは、何かの臭いに気が付いた… 何だろう、この臭いは……?独特な、豆を煎ったような鼻腔をくすぐる香ばしい香り…  臭いが流れてくる方向に顔を向けると、そこには十夜が立っていた。その手には銀色のトレイを持って………トレイの上にはコップが二つ。 いつも、咲夜が淹れてくれる紅茶を入れるようなカップではなく、円柱に取っ手のついたコップだった。 十夜は、それの中身をこぼさないように慎重にわたしのいる場所まで持ってきて、一つをわたしの前に、一つを自分の前に置いた… 「…今日は、少し遅くなっちゃいましたね。すみません」  わたしは、十夜の声に返事を返さなかった。無視したわけではない、目の前に置かれた飲み物に集中していただけ…
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