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「………十夜、これは…何?」
目の前に置かれた真っ黒な液体、そこから立ち上る香しい香り。見た事もない物体だった
「あっ、やっぱり知りませんでしたか。……これは『コーヒー』っていう飲み物です。レミリア様に連れてこられるまで、あっちの世界では僕が好きな物でした。
もっとも、これを飲むと夜にあまり眠れなくなるので控えてましたけど……どうしても、飲みたくなって咲夜にお願いしたんですよ。
そしたら、わざわざ人間界まで調達に行ってくれたらしくて。で、昨日レミリア様にも飲んでもらったんですが、
『苦っ』って言って嫌がられてしまったんですよ……それで、今日はパチュリー様にも飲んでもらおうと思って持ってきたんです。
咲夜が、『パチュリー様は紅茶しか飲まれないから、きっとコーヒーなんて見たことも無いでしょう』って言ってたから」
確かに以前、人間が読む本で見たことがある。コーヒー豆というのを煎って砕き、それを熱湯
で濾して飲む物だと書いてあった。が、実際に見るのは初めてだった
「で、わたしはこれを飲めばいいのね?」
十夜は、ニコニコしながら元気に『ハイっ』と頷いて見せた
正直、少し抵抗がある。確かに、この香りは良いが、問題はこの色だ。コップを手に取り、中を覗いてみ
た。………底が見えない……コップの中には漆黒が広がっている
横目で十夜の様子を見てみる。わたしの顔をじっと見つめている…飲むしかないようだ……
……全く………純粋なのも、罪よね……
「……分かったわ」
わたしは意を決してコップを口元に運ぶ。
噎せ返るような香りの洪水が鼻腔に流れ込んで来る。
液体を口の中に流し込み、黒い液体を味わう
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