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それにしても、この、コーヒーというのはなかなか美味しいものだ(もっとも、砂糖が入っていればだが)
「……ねぇ、十夜。今度から、あなたがこのコーヒーを飲む時は、わたしにも淹れてきてくれるかしら?
毎日紅茶でも悪くないけど、コーヒーもたまには飲んでみたいわ。あっ、もちろん砂糖入りでね」
少し怯えた表情のままだった十夜の顔がその言葉で輝いた
「本当ですか、パチュリー様?」
わたしは、首を縦に振った
「えぇ、お願いするわね、十夜。…あ、先にも言ったけど、必ず砂糖は入れてね。あんな苦い物は二度とごめんだから」
わたしは心の中で『わかってるでしょ?』と付け加える
十夜はわたしの目を見つめた後、『分かりました』と、笑顔で返事を返すと、いつものようにわたしの隣で魔術書を読み出した
わたしと十夜の間に穏やかな空気が流れる……
十夜と出会って一ヶ月しか経っていないのに、ずっと側に居てくれたような感じがする……
彼が側にいてくれれば、何となく暖かな気持ちになる
長い間生きているが、こんな気持ちは……初めてだった
レミィと一緒に居るときの感じとは違う
彼女と一緒に居る時と、どこが違うのかを訊かれても答えることは出来ないが、確実に何かが違う
……自分の気持ちが分からない事が、こんなにもどかしいと思ったことは無かった……
『知識の魔女』と呼ばれるわたしにも、分からないことがあるのだと教えられた……
……目の前の幼い、人間の少年に……
-少し……悔しかった-
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