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「……パチュリー様。今日はこれから暇ですか?」
コップに口を付けていたわたしに、十夜がおもむろに問いかけてきた
「……暇と言えば暇だし、暇じゃないと言えば暇じゃないわね…ここで本を読んでるだけだし………大体、
あなたもずっとここに通ってるんだから、わたしの行動は分かってきてる筈じゃないの?」
「まぁ、そうなんですけどね……じゃあ、今日はこの後、読書は少しだけやめて暇にしませんか?」
珍しいと思った。今まで、十夜はこの図書館に遊びに来て本を読んで、わたしと話をして……帰るだけだった。なのに……その十夜の方から読書拒否ともとれる言葉が出るとは………
「………いいけど、どうするの?……なにかしたい事でもあるのかしら?」
「はい。パチュリー様と一緒に外に出てみようかなって思って。まぁ、早い話が散歩ですね。
ほら、パチュリー様ってほとんどこの図書館から出ないじゃないですか。だから、今でも体力が無くて喘息の持病が治らないでしょう?」
「うっ……」
図星だった……わたしは、長い間この図書館から外に出てはいない……極稀に、所用をたすために館の外に出ることはあったが
それは短時間のことであって、運動とは呼べない程度の動きだった。十夜と出会った頃に患っていた喘息も未だに治ってはいない
「だから、これから少しずつでも運動しましょうよ、ね?俺も付き合いますから……運動して体力をつければ
喘息なんてすぐに治っちゃいますって!………それに、…少し、話したい事もありますから……」
最後に十夜は甘えたような表情で『駄目ですか?』と付け加える………この辺りの表情は昔と何も変わっていない………ちょっと、ずるいような気がする
体格的にはわたしよりも遙かに屈強になっているのに、こういう時だけは可愛いなどと思ってしまう
「………仕方ないわね……その代わり本当に少しだけだからね……」
駄目……この笑顔には勝てない
「やった!だからパチュリー様は好きなんです!じゃあ、これから出ましょう。早くしないと夜の妖怪が活動する時間になっちゃいますから」
「はいはい……」
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