終わり

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「……くふ」 何かが漏れる。体から漏れる。赤いものが漏れる。 「…………」 何も起こらない。何も起こせない。麻痺した体が次第に痛みを思い出す。 「……あは」 けれど、彼は、苦痛の表情以上に、歓喜の表情を見せる。 「あはは……」 それは達成した者が得られる喜び。全てを成し遂げた者だけが生み出せる顔。 「あははははははははは!!」 全てを失って、それでも出せた奇妙な感情が顔に出る。 そう、彼は嬉しかったのだ。 自らを異端と呼んだ、全ての者に復讐出来たことに。 「あはははははははは!!!」 けれどどうしたことか。腹から溢れる、温かい液体以外に、彼の頬にも、液体がひたる。 何かも分からず、ただひたすらにそれを流し続け、溢れ出し続け、やがて彼の笑い声は止まる。 彼。名前を捨てた彼。魔法人間(マジックヒューマン)と呼ばれた彼の、一度目の終わり。 いつか夢見た平和は、どこまでも遠い存在であった。
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