ヒヨコノユメ

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神社で飼われていたそのヒヨコは、大人になれないヒヨコになった。 境内で遊ぶ子供達のアイドルだったヒヨコ。 「ずっと、小さいままなら可愛いのに―」 無邪気で残酷な子供の願いを、何か大きな力が叶えた結果―… ヒヨコは静かに、大人になれないヒヨコになった。 兄弟達は次々と黄色い柔毛を脱ぎ捨て、いつしか母と見分けが付かなくなってしまった。 自分だけ永久にヒヨコのまま。永久に… 母は言います。「いい子にしていれば、きっと大人になれますよ」 しかし科学的にも生命工学的にも大変貴重なサンプルとして、哀れヒヨコは母鳥の元から無理やり引き離され、研究機関の白い箱の中で来る日も来る日も沢山の人間の手に晒されて薬品や電気刺激に苛まれる毎日… 食べるものも合成飼料しか与えられる筈もなくそれすらもサンプル取りの為の実験なのであった。 ヒヨコは、白い天井を見上げつぶやく。 「いい子にしていれば、きっと大人になれるんだ」 「大人になったら、ココを出られるかなあ。」 それは叶うあてもない     悲しいヒヨコノユメ    
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