13人が本棚に入れています
本棚に追加
秋から冬にかけて、私の住む町には白鳥が渡ってくる。
彼らの渡来を見るのが、私の一番の楽しみ。
今年も近くの湖に彼らが渡って来たのをニュースで知った。
だから私は今、その湖にいる。少々暗いが気にしない。
ここは、自然を残したまま…少しだけ手が加えられた程度に小さな柵が立てられ、数ヶ所ベンチが置かれており、小さな明かりの街灯がたっている。
白鳥が渡ってくるのを楽しみにしている地域の人や、観光にきた人たちのためだ。
私はいつも真ん中のベンチに座り、何をする訳でもなく彼らを見る。
周りからみれば寂しい人に見られるかも知れないが、そこはあえて気にしないのが私。
だって、白鳥って綺麗だと思わない?
美しい純白の羽。
とても優雅で…声は透き通るように綺麗。
とても落ち着く…安心する。
寒いのだが、彼らの声にうつらうつらと目を閉じかけた時だった。
白鳥と違う、人の声が聞こえたのは。
声じゃなくて……歌…?
気がつくと辺りは真っ暗で、人一人いなくなっていた。
もうそろそろ帰ろう、そう思い立ち上がろうとしたときだった。
「お前なにしてんの?」
_
最初のコメントを投稿しよう!