歌を聞いた日

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「きゃあっ!?」 立ち上がろうとした姿勢そのままにベンチからずり落ちた。 「ちょっ…大丈夫か?」 「いったぁ~…」 パタパタと服を叩き立ち上がり、声の主をみる。 「あのー…」 「あ、ああ。こんな寒いのにベンチで動かねぇし目ぇ閉じてっから死んでんのかと思ってな」 「…はぁ…。それはご親切にどうも…」 するとお節介な人は背を向ける。 「おぉ。んじゃ、『ちなろ』さん」 「…はい。それでは…」 彼が見えなくなった所でハッとする。 「えっ…え!?なんで私の名前っ」 ふと垂れてきたマフラーを見る。 母が刺繍した“Chinaro”の文字。 「あぁ…なんだ…」 ふと先程聞いた歌を思い出す。 幻聴だろうか…眠りかけていたからきっとそうだろう。 まさかさっきの人…なんてね。 これは、去年の冬…12月の話。 *
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