‐The moon‐

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   終始笑顔を絶やさない執事さんと目が合うと、さらにニコニコッとしてくれた。ああ、なんて素晴らしいお方なんだ。  練習場にある時計に目をやると、そろそろ十時になろうかという時分。凛の家とはいえ、泊まり込みではないのに夜中まで居残るのはさすがにいけないとのことで、十時が目安となっている。親しき仲にも礼儀あり、だ。  まだやりたいのか、「むぅ……」と呟きながら、ちょっとばかり不満げな表情を浮かべた舞の頭の上に手を乗せ、俺は笑顔で口を開く。 「ほらほら、夜遅くまではダメだろ。明日また頑張ろうぜ」 「はーい」  あら、素直に聞いてくれたわこの子。「翔のせいなんだからね!」みたいな皮肉がくることを少しばかり覚悟していたのだが、なんだか余計に罪悪感に苛(さいな)まれる。  とりあえず、俺は麗人や大輝とともに執事さんに連れられて、練習場の隣にある小さめの部屋に入る。一応それなりに汗をかくため、今は制服ではなく練習着を着用中なので、着替える必要があるのでーす。  
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