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そんな少年の顔を見た少女は、ずっと堪えていた涙が少しずつ零れ始める。かけがえのない人との時間の終わりが、刻一刻と迫ってくることを暗示しているかのように。
少女は少年に握られていない方の右手で、大粒の涙を拭う。
最後くらいは笑顔でいたいから――という想いによる行動も、十歳満たない少女にはやはり本当の気持ちは隠しきれないでいた。
口を震わせながら、少女は少年に問う。
「またいつか会えるよね……?」
「うん。……絶対に、会えるよ」
少年の答えに、少女は少しずつ笑顔を取り戻していく。だって、絶対に、って約束してくれたのだから。
たかが少女の問いかけに答えた少年の口約束でしかないのだが、それだけでも少女は救われたような気がした。少年を信じているから。絶対に会えると信じているから。
繋いでいる手と手の力が強まる。絶対に放さないように。絶対に離さないように。このときだけは、いつまでも一緒にいたいから。ただ、隣にいてくれることが嬉しかったから。
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