‐The moon‐

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   熊ちゃんから優勝商品を聞いてなんだか無性にげんなりとしてしまった俺とは対照的に、ものすごくやる気を出してしまった人間がひとり。……まあ、みんなわかってると思うけどね。 「翔! 一緒にやろっ!!」 「…………」  やる気がなかったと言ったら語弊があるが、イベントのひとつくらいにしか思っていなかった舞が、目をキラキラさせながら隣の席に座る俺に懇願してきた。  もちろん俺はノーリアクション。魂胆が見え見えなんだよバカヤロー。目当ては競技種目のダンスじゃなくて景品だろーが。 「ち、違うもん! べ、別に翔と一緒に大人の階段をのぼりたいんじゃないもん! 温泉に入りたいだけだもん!」 「……ホントに?」  つか、それ以前にコイツ人の心を読んでるんだが……それは瑞穂にしかできない代物だと思っていた。単純に俺がわかりやすいだけ?  真偽を聞き返されると、一生懸命に首を縦に振り続けている舞を見た俺は、とりあえず右隣にいる麗人の意見を聞いてみることに。  
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