‐The moon‐

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   いきなり生徒から猛反対を受けた熊ちゃんは、困った顔をしながら後頭部を掻いた。俺の前の席では瑞穂がギンギラギンにさり気なく冷たい視線をおくり続けている。  舞が本気でビビっちゃっているので、瑞穂にはできるだけ心静かにしていただきたい。俺も心底ビビっているのは内緒だ。 「うーん……」と、既に参加申し込みをしてしまった手前、なんとか瑞穂を説得させたい熊ちゃんが言葉を選んでいると、そこに助け舟を出したのは麗人であった。 「まあまあ、申し込んじゃったならしょうがないよ瑞穂。ダンスだって、別に嫌いじゃないだろ?」 「……それはそうだけどね」  なんか歯切れの悪い返しをする瑞穂を見た舞が、今であれば少しばかり積極的にいっても怖くないと踏んだのだろうか、先程までのおとなしさを捨て、声を大にして口を開く。 「瑞穂ちゃんもやろうよ! みんなでやった方が楽しいでしょ?」  ハシャぎだした舞に腕を掴まれブランブランされてる瑞穂は、困惑したような表情を一瞬浮かべると、隣の席でひとりバトエンをやっている凛へと視線を移した。  
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