‐The moon‐

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   そもそも大金持ちのお嬢さまが何故にホームルームの時間にひとりでバトエンをやっているのか。つか、なぜバトエンなんか持っているのか。というかバトエンなんかなんで知っているのか。そんなこと以前に俺らはもう高校生なんだよな。みたいな疑問は俺の心にはない。だって、凛にそんなことを訊くのなんて野暮だろう?  瑞穂も俺と同じような思考回路の持ち主だったのか、凛の机の上で現在繰り広げられている壮絶な闘いにふれることなく、文化祭のイベントについて訊ねる。 「凛はどう思うのよ?」 「ちょっと待ってー。今いいとこなのー」 「…………」  うわあ。人生で三回しかない高校の文化祭のイベントなんかより鉛筆をコロコロ転がすことに夢中な凛に、なんてコメントしてやればいいのやら……。とりあえず、お互いの体力を両手の指を使って数えてるらしいのだが、左手の指の方がさっきふたつほど開いたのはどうしたのだろうか。  バトルの展開が複雑になってきて無意識のうちに犯してしまったミスなのか、それとも左手担当のモンスターの方が好きだからヒイキしているのかはわからない。ただ右手担当のモンスターに同情の念をおくる。  
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