‐The moon‐

14/26
前へ
/80ページ
次へ
   というか凛に至っては、ダンスをやっている目的を未だに知らないんじゃないだろうか。ずっとバトエンやってたんだし。 「翔! ボーっとしてないで、練習しよ!」  おっと。そんな他人の心配をしている場合ではないようだ。  腰をおろし、後ろにまわした両手で自分の体を支えながら、練習を再開した麗人と凛を眺めている俺に、痺れを切らしたのか、舞はさらにヒートアップした語調で練習を促す。 「はいはい」言葉を返した俺がゆっくり立ち上がると、ズンズンこちらに歩み寄ってくる舞が俺の腕を無造作に掴み、引っ張りだす。「早く早く!」  どんだけ急かすんだお前は。腕を引っ張っている上に、言葉によっても俺に催促するのか。ちょっと痛いが、我慢するのが大人ってもんだ。今の舞はなんだか燃え上がっているみたいだから。  頭の中でまったく関係ないことを考えていると、眼前にある後頭部がくるっと反転し、足のステップを頭の中でイメトレしてる真剣な表情の舞の顔がこちらに現れた。  
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加