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「翔、二回同じステップしたら、その次はクロスするの。タイミングは、私が右足を出したとき」
「……お、おけ」
め、目がマジですたい。舞のここまで真剣な顔、一昨日の夕飯で出た焼き魚の骨を取り除くとき以来だ。それにしても、魚の食べ方が綺麗なんだよなコイツ。
一昨日の夕食後の皿の上に残っていたモノの見た目が月とすっぽんであったことを思いだした俺。いいんだ、別に自立できるようになったら焼き魚なんか食べなきゃいいんだ。だから別に悔しくないんだ。
「もう時間だから終わりだってー!」
舞に言われた通り、タイミングよく足をクロスさせようと練習を開始したとき、凛の声がこの練習場に響き渡る。そちらを振り向けば、凛の隣には高齢の執事さんが。
短く整えられた白髪頭に白い口ひげがチャーミングなおじいさん。その絶え間ない笑顔に、俺は何度癒やされたことだろう。なんといっても、俺にまで様づけで呼んでくれる紳士。昔は「翔お坊っちゃま」と呼んでくれた。大輝にまでそう呼ぶのだから、並大抵のことではない。
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