‐The moon‐

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  「とにかく私の胸をつつくの!」 「逆ギレかよッ!」  的確すぎる俺のツッコミに怯(ひる)んでしまった舞は、一瞬泣き出しそうな表情を浮かべるも、すぐに大声を張り上げて反論してきた。  反射的に俺も大きな声を出してしまったのだが、今は夜遅いんだよね。このあたりに住んでいるかたがたはスミマセンでした。  そうやって周囲への謝罪をしているうちに、舞は「もう知らない!」とぷいッと頬を膨らませながらスネ始めた。どんどん先を歩いて……あ、躓いた。  結局、俺の隣をゆっくりとした歩調で歩いている舞。俯いているから表情がよくわからないが、絶対に顔を真っ赤にしてんだろうな。感情の起伏が激しいヤツだ。 「……舞?」 「…………」 「おーい?」 「えっち!」  意味がわからない。  なぜ平手打ちをくらわなくてはならないのか。そして大声で誤解を招くような発言は慎んでいただきたい。夜道での女性のそんな悲鳴は、警察が出動しかねない。  
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