‐The moon‐

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   幸いにも舞の声を聞くことのできる範囲に人はいなかったので、お巡りさんがやってくることはなかった。いや、マジでホッとしている。  とにもかくにも、理不尽な攻撃を受けた上に、俺のこれからの未来を陥れかねないことをやらかした舞を叱ってやらなくては。 「いきなりなにすんだお前はッ!?」 「私が躓いたときにパンツ見たでしょッ!?」 「誰が――」 「うるさい」  痛い。  舞と激しすぎる口論を繰り広げていると、いきなり後頭部に鈍痛が。軽く涙目なのだが、舞も後頭部を押さえてうずくまっていたことを視認すると、なんだか痛みが和らいだ。人間の七不思議だ。  とりあえず平和に暮らしていた俺たちふたりに戦争をふっかけてきた犯人が誰であるかを確認すべく、後方へと振り向く。そして俺の視界に飛び込んできたものは、 「ね、姉ちゃん……!?」  我が中澤家の長女であり、俺の実姉であり、一流企業のOLであり、イケメンハンターである――中澤美姫(なかざわみき)の姿であった。  
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