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ただ強い決意を秘めた眼差しに、少女も閉口する。少しばかり驚かされたことに文句を言おうとしていたのだが、少年の真剣な瞳はただ少女の心を見続けた。
「……舞。俺たちが話すのは、今日が最後にしよう」
「――!」
少年の言葉に少女は先ほどとは別の驚きを覚える。強く打ちつけられるような、つらい痛みが少女の心に襲いかかった。
また、涙が出てくる。わからなかった。少年の言っている意味がわからなかった。やっと止まってくれたと思っていた涙が、また溢れ出てくる。
少年はそんな少女を見ても、揺らぐことなく続ける。
「いつか、必ず会うんだろ? だったら、明日からはお互いにそれぞれの道を歩こう。そして、その道がまた交わったとき、大きくなった姿を見て、笑顔で抱きしめ合おう。……舞には、いつまでも隣にいてほしいから」
「……うん」
「……じゃあ、“二人だけの約束”だよ?」
「……うん。約束」
少年の本当の気持ち。
少女の本当の気持ち。
いつか交わる未来を見据えて、二人は別々の道を歩き出した。
そして。
再び交わった現在(いま)。
二人が彩る未来(あす)は――
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