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「バー『オーシャン』。時給850円。従業員募集中・・・か」 ホットドッグ片手に求人雑誌に見入る春の新人大学生。 大人じゃね? 俺は最後の一口を無理矢理押し込み、流し込むようにコーラを口に含んだ。 そして喫茶店から足早に出た俺は、さっきのバーのバイト内容にもう一度目をやる。 『従業員募集中。初めての方大歓迎!』 別に騙されやすい性格ではない(たぶん)が、妙に最後の一文が気にかかって、気がつくと俺はその バー『オーシャン』 の店の中へと導かれるように足を運んでいた。 バーのトビラを開けると同時に誰もが聞いたことがあるだろう、あの鈴?の無駄にうるさい音が俺を歓迎する。 店内を見渡しながらカウンターの前辺りまで足を運ぶ。 「ん?」 カウンター越しにグラスを磨いていた男性が顔をあげる。 どうやら、ここのマスターが俺の存在に今になって気が付いたようだ。 鈴が鳴った時に気付け。 「いらっしゃいませ」 これが普通なのか、それとも無愛想なのかわからないどっちつかずの挨拶で迎えられる。 俺はとりあえずマスターの正面に腰を下ろした。 そして、俺の顔を一目見るなりマスターの顔が急に驚きの顔へと変貌する。やべっ、俺なんかしたっけ? 思わず少し俯きになる。 「ぐ、具志さんっ!?」 「あ、違います」 俺はわけのわからないマスターの発言を流して、求人雑誌を取り出し、ここのが書いてある場所を指し示した。 というか具志って誰だ。 「あ!バイトの子ね!ごめんねー」 ・・・悪い人ではなさそうだ。 「君、バイト経験は?」 「いや、ないです」 「お酒は?」 「少しなら・・・」 「無口な女の子ってどう思う?」 「え?」 「どうなの?あんまり好きじゃないの?」 「い、いや・・・まぁまぁ」 「はい、おっけ。お疲れ様。じゃあ今日の夜からきてね」 ・・・はぁっ!? わけがわからないぞ。 今のが面接だったのかも定かではいし、そもそも当日出勤は馬鹿げてる。 ――――――が。 べつに悪くは無かった。 どうせすることがない。 「あー、わかりました。何時頃ですか?」 俺がそういうと、マスターは カウンターの 一番左端――――――― ここから一番奥で何か作業をしている女の子へと顔を向ける。 「神崎ぃ、今日何時上がりだ?」 あ、女の子いたんだ。
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