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「おっ、来てくれたか」
バーに入るなりすぐさまマスターの手招きにより俺は昼間と同じ席に着いた。
奥には相変わらず彼女が無言で何か作業をしていた。
名前は・・・確か・・・。
ん、なんだっけ。
っていうか、この店バーのくせに夜の8時に客0人ってどれだけなんだ。
「おーい、神崎!」
あ、そうそう神崎だ。
神崎はギロリとマスターを睨み付けると、手に持っていた白地のタオルを荒っぽく机上に投げる。
普通にこえーよ。
「・・・」
カウンター越しに目の前でやってきた神崎は何も言わず、ただ俺の瞳を捉えて離さない。
う、動けない・・・だと?
「今日からここで共に働く仲間だ・・・
えーと名前は?」
「村田貴洋です」
「そう、村ちゃんだ」
え?今コイツなんて
「これでようやくこの店の従業員が三人になったわけだ」
「ストップ」
ダメだ一回突っ込ませてくれ。
「三人って・・・マスターを含めてですか?
あと村ちゃんってやめろ」
そんな俺を見た店長は馬鹿面で
「うん」
とか答えやがった。
横の神崎といえばぼーっと虚空を見つめていた。
・・・本当に俺はここで従来のバイト生活はできるんだろうか?
不安が半端ではない。
そんな不安を察したのかマスターは慌てて口を開く。
「あ、でもバイト代はちゃんと払うから」
それを聞き少し安心した俺は立ち上がりマスターの目を見据えた。
「じゃ、よろしくお願いします」
頭をゆっくりと下げる。
するとカウンターしか移らない視界に、すっと何かが入って来た。
コーラだ。
「よろしく・・・む、村田・・・くん」
まさかのシャイガール。
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