プロローグ

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今俺は母親と二人暮らしだ。 刑事だった父親は捜査中の事故で死んでしまった。 五年前、急に家に届いた一本の電話。 それは父の死を知らせるものだった。 それからどれだけ時間が経っても、不思議と涙は出なかった。 というよりも起きた現実を直視できずに信じ切れなかった。 それでも火葬場でとうとう大量の涙を流してしまったことを今でも鮮明に覚えている。 そのときになってやっと死を実感し、そう思ったら泣かずにはいられなかったのだ。 その当時はまだ小学生だったこともあったのかもしれない。 とにかく悲しくて、もう父さんはこの世にいない。 そのことが怖くて、それでもどうしようもない現実をただ受け入れるしかなかった。
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