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ふと、電子音が鳴る。
顔を上げモニターを見ると、秘匿回線が入ったことを告げる文字が。
パネルを操作しそれに応じると、モニターに映ったのは――ヒカルの顔。
「どうした?」
状況を飲み込めず、咄嗟に出た言葉は固い言葉だった。
『――ええと、ユウタくん、大丈夫かなって』
その言葉を受け、思考が真っ白になる。
その原因はこうまでして伝えたのはそんな事かと言う呆れからが半分。
もう半分は――こんな状況でも人を気遣うのを忘れない彼女の優しさへの驚きからだ。
今度は、脱力してため息を吐いた。
「あ~~……もう。そんな事に秘匿回線を使わないでよ」
『あ、良かった。……そうそう、その調子。ユウタくん、この前からず~~っとこんな怖い顔してたんだよ』
ヒカルは眉を指で引っ張り、彼女曰く『怖い顔』を作った。
それを見て、思わず噴き出す。
「ヒカルちゃんの方こそ、変な顔しないでよ。気が抜けちゃう」
『む~~っ! 酷いな! 人が心配してるのに!!』
「ハハハ、ゴメンゴメン。でも、こっちは大丈夫。ありがと」
『…………どういたしまして』
不承不承という感じで返事を返すヒカル。
本当に、相変わらずだと思った。
この幼馴染は、いつだって、どこだって変わらない。変わらないでいてくれる。
……良い感じに力が抜けたようだ。
くそ。分隊長が励まされるなんて、それじゃアベコベじゃないか。
誰よりも僕が他の皆を気遣ってあげないとならないのに。
「それじゃ、一旦切るね。今度は僕から皆に話しかけるから」
『あ、うん、了解』
回線を切り、今度はオープンチャンネルで話しかける。
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