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「こちら黒井曹長。分隊各員、各々の心理・健康状態を報告――いや、格式ばった言い方は止めにしよう。――皆、大丈夫?」
新たにモニターに映し出された二つの顔は、それぞれ呆気にとられた表情と、満面の笑みを浮かべていた。
後者の人物がまず、元気の良い声で応じてくれた。
『は~~い! こちら天見伍長! 心理・健康共に良好で~~っす!!』
ピコピコと触覚の様に髪の毛の一部を揺らして返事をする天見アイル。
彼女は学園時代でのクラスメイトで、軍属になった後も変わらない元気を周りに振りまいてくれる、ムードメーカーだった。
もう一人はアイルの声にハッと我に帰り、続けて応じた。
『こちら上之宮軍曹。私も問題ありません。何せこの鎧装機は我が社の開発した兵器ですから。何者が相手でも恐れる必要は全くありません。……まぁ、黒井さんは知りませんが』
トゲのある言葉を返してきたのは上之宮レイナ。とある巨大財閥のご令嬢で、彼女の言う様に鎧装機はその財閥傘下の企業が開発したものだ。そのせいか学園時代はひたすらに上昇志向が高く、彼女は今の様に事ある度に僕に突っかかってきていた。
だが今ではそれも心地良い。
「まぁ……上之宮さんの言う通り、さっきまで怖くて仕方なかった」
『ダメだよ~~黒井くん! 黒井くんは皆の隊長さんなんだから~! 元気出して~~っ!』
「ああ、うん、ごめん。それをさっきまで忘れてて、落ち込んじゃってたんだ」
『という事は、今は大丈夫なんですね?』
言った後にレイナは慌てて『隊長である貴方が駄目になると、私達に支障が出ますから』と付け加えた。
それに苦笑しながら応える。
「うん。皆の顔見てさ、ふと思ったんだ」
何を、と問うたのは今まで黙っていたヒカルだった。
見ると彼女は僕が言う事を既に見透かしているのか、微笑みを浮かべていた。
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