一章

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人類は未曾有の危機にさらされていた。 西暦2014年10月30日。 四国の中心に突如として黒く輝く多面体が現れた。 時間が経るにつれ黒い輝きを増していく物体から、やがて虚穴から泥が漏れ出すように次々と極彩色の肉塊が産み出されていった。 産み出された肉塊は放射状に進行を開始。進行ルート上にある全ての物体をすり潰し、全ての生物を喰らい尽くしていった。 日本国軍は直ちに出撃。陸海空軍、あらゆる戦力を投入して迎撃に当たるが、いかなる攻撃を加えてもその怪異に損傷を与える事は出来なかった。 三日後。怪物の進行を止めるどころか留める事すら出来ず、北と東は本州上陸、西と南はアジア諸国やオーストラリア上陸が危ぶまれる状況に陥る。 同日、日本国政府は暴挙とも言える一つの決断を下す。 四国全土に対する核飽和攻撃の断行。 目的は四国全域に侵攻した怪物の一掃、及び怪物出現の原因になったと思われる多面体の破壊。 既に四国住民の避難・生存は絶望的であり、本州上陸を許せばすぐさま首都・京都も戦禍を被り、天皇陛下の御身も危ぶまれる。 加えて他の核保有国からの圧力がかかり始めていた。 一刻の猶予も許されない事態に、政府の武断派は議会の反対を押し切り、軍部に『自国に対する核攻撃』を命令。 同日深夜。20発もの戦術核が四国の大地にあったあらゆるものを焼き払う――はずだった。
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