一章

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――滋賀県南部、大津市内。 住民の避難が完了し、ゴーストタウンと化した大津の街に、僕達は布陣した。 京都の街を東進しながら蹂躙したクロウラーの一波は、更に三波に分かれ、進行してきている。 その内の一波をこの大津市で迎え撃ち、殲滅するのが僕等、特殊機甲師団 第一三四小隊の任務である。 『――通達は以上。状況開始後の分隊の指揮は黒井曹長に一任する。重ねて言うが……クロウラー進行予想ルート上には新たな首都――長野がある。この作戦の成否が日本国の今後を左右すると理解せよ。何か質問は?』 各々が、一斉に質問が無い事を無線で伝える。 『では敵隊と遭遇まで各員待機。別命があり次第、行動を開始せよ』 了解、と四人が応じると小隊長からの回線は切れた。 静寂がコクピット内に戻る。 深く息を吐いて、目を閉じた。 ……全てが唐突だった。 突然の正体不明の怪物の出現。それを見計らったかのような『アカデミー』からの全課程修了発行。そして軍隊への所属命令。 そして今、鎧装機に乗って戦場に立っている。 ……ついこの前までの学園生活が嘘の様だった。 思い返す。ヒカルを始め、皆との騒がしくも楽しい日々。本当にありふれたものだったけれど、地獄の最中に放り込まれた様な今の状況から鑑みると、如何に温かく、そしてかけがえの無いものであったかが分かる。 心の中はもうグチャグチャだった。 あの日に今すぐ戻りたいという懐古の念、日本を守るという自分達には重過ぎる責務から感じる重圧感、怪物と戦う前に逃げ出したいという恐怖。 手で顔を覆い、俯いた。 もう一度、ため息を吐く。
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