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メイン通りとはかけ離れた路地裏の道に止められた車に、銃で脅されている俺は、半ば強制的に乗せられた。
外から見た感じだとかなりの高級車だったが、やはり中身も高級感溢れる作りであり、座席には毛皮が敷かれていた。
こんな高級車に乗るとは、やっぱりこいつはどこかのお嬢なのか?
フワフワの座席に座りながら、隣に腰を下ろす少女を見つめ、そんなことを思った。
座席がフワフワなのは暖かくてこんなに気持ちがいいのか。
余計なことを考えてしまうあたり、俺は案外冷静なんだろうか。
頭に銃を突きつけられてなければ最高の乗り心地なんだがな。
少し落ち着いた俺は、ダメ元で再度話しかけてみた。
「なぁ、あんた誰なの?」
「死にたいの?」
先ほどと全く同じ答えに多少イラっときた。
おいおい。
「それしか言えねぇのかよ……」
「そんなはずないでしょ」
うおっ、喋った。
当たり前のことなのに、この少女が相手の場合は感動に値する。
返事をくれた少女に、調子にのって俺は質問を続けた。
「じゃあ、あんたは誰?」
「俺はどこに連れてかれんの?」
「なんで俺に声が聞こえるって分かったの?」
「どうして俺なの?」
「好きな食べ物は?」
「スリーサイズは?」
おっと関係ないことまで聞いちまった。
我ながらマシンガンばりの質問の連続攻撃。
どうだ!!
俺はアシンメトリーにカットされている自分の髪を揺らし、ドヤ顔で少女を見つめた。
すると、無表情だった少女は、フッと息を漏らし、俺を小馬鹿にするように答えた。
「上之宮玲菜」
「向かっているのは本部」
「魔法で探したらあなたが見つかった」
「あなたを選んだ理由は着いたら説明する」
「後の二つは答える必要性を感じない。これ以上何か喋ったらほんとに撃つわよ」
恐ろしく早口の少女の答えに、一瞬頭が着いていかなかった。
負けました。
ドヤ顔をしたことに激しく後悔をした。
あと答えに対してツッコミどころが多すぎるんだがどうしよう……
魔法ってなんだ?
本部ってなんだ?
聞きたい……
さっきは一瞬馬鹿にした表情になった気はしたものの、依然と厳しい顔でこちらを見ている少女。
聞いたら今度こそ本気で撃ちそうな勢いだな。
うん、死にたくない。
俺だってバカじゃない。
やめとこう。そう思った。
「あんたスコーンとか好きそうだよな」
あぁ、この口は!!
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